英語を習い始めたのは小学5年生のときからだ。母はそれまで息子の教育になど、なんの関心もなかった人だったけれど、ある日、近所のおばさんに「中学に入る前に、英語くらいやっておかないと」とかなんとか勧められ「おまえ、明日から英語に行け」と相成った。わけのわからぬまま、それから週に一度「英語に行く」ことが始まった(ちなみに母は、病院で検査を受けると『今日は身体にコンピューターをかけてきた』と話していた)。教室といっても塾でもなんでもなく、ふつうの公営住宅の一室である。先生は、30代なかばの女流画家だった。近所のおばさんたちに、大学時代に英語を少しはやったのだろうから、息子や娘に教えてくれないか、と無理…