我が家の道路の向こうに、山椒の木が一本植わっていた。季節になると道行く村人たちが、それぞれに山椒の実を数房摘んで、持ち帰っていた。山椒の実は、昔から香辛料として重宝がられて来ている。私は、実をすり鉢でつぶし、砂糖と味噌をまぜご飯に載せて食べるのが楽しみだった。・・・・・ ある時、その山椒の木を、近所の爺さんが、草刈り機で刈り払おうとしていたので、止めるように注意した。「みんながこの実を楽しみにしているのだから」と。その場はそれで収まったかに思っていたが、爺さんの娘さんが年に何回か里帰りする。その娘さんが我が家を訪ねて来た。何用かと思っていると、「 爺さんが山椒の木を切り倒した」と言って、謝罪に…