▼本を持つことが禁じられ、本が燃やされる近未来を描いたディストピア小説。レイ・ブラッドベリのこの作品が描いているものは、「近未来」などではなく、既に現実のものとなってしまっている、高度大衆消費社会に対しての警鐘と思われます。 ▼標題の「華氏451度」とは、紙が発火する温度のことです。つまりは、意図的に本を燃やす者たちがいるということです。 ▼なぜ本が燃やされるのか。実は、本=危険思想を明示的に弾圧するということではありません。むしろ、そうした権力の中枢は見えてこない。ここは、同じディストピア小説である『1984年』(ジョージ・オーウェル)と異なるところです。 ▼オーウェルにおいては、「ビッグ・…