続けて近衛は書く。 《海軍が賛成するのは政治上の理由からであって、軍事上の立場から見れば、まだ米国を向ふに廻して戦ふだけの確信はない』といふので『これは洵(まこと)に意外なことを承(うけたまわ)る。 国内政治のことはわれわれ政治家の考へることで、海軍が御心配にならんでもよいことである。海軍としては純軍事上の立場からのみ検討せられて、もし確信なしといふならば、飽くまで反対せらるるのが、国家に忠なる所以(ゆえん)ではないか』といふと豊田は『今日になっては海軍の立場も御諒承(りょうしょう)願ひたい。ただ、この上はできるだけ三国条約における軍事上の援助義務が発生しないよう、外交上の手段によってこれを防…