『批評』(復刻版)合本にて全6巻。原本は昭和14年8月創刊、山坂あって最終号は昭和20年2月発行。文芸批評の同人雑誌だ。復刻版刊行にさいして、総索引や解説を付して、歴史研究の一次資料たるの便宜が整えられた。 「山坂あって」というのは、同人雑誌維持の苦労を味わった者であれば容易に想像がつくはずの、窮境やらゴタゴタによって、間遠になった時期もあるという意味だ。しかも窮屈な軍国主義下であり、戦時下である。同人各個の身の上にも身辺事情にも、苦境異変数えだしたら切りがあるまい。徴用された者も、病気療養した者もあったろう。姿を隠さねばならなかった者すらあったかもしれない。むしろよくぞここまで、この雑誌が発…