「ああ、この歌ですよ、この歌こそが、私の人生そのものなんです!」 男は、少し焼けた色褪せた手帳を握りしめ、目を輝かせた。 喫茶店の少しざわついた空気の中で、彼の声はひときわ熱を帯びていた。 『死ぬるまで/歌ふとぞ思ふ/わが魂の/燃え尽くるまで/歌ふとぞ思ふ』 「初めてこの歌に出会ったのは、私がまだ本当に若くて、何者でもなかった頃です。将来への漠然とした不安と、胸の奥でくすぶる情熱を持て余していました。そんな時、ふと目にした歌集の中に、この短い言葉たちが、稲妻のように私の心に突き刺さったんです。」 彼は少し声を詰まらせ、遠い日の記憶を辿るように目を閉じた。 「その瞬間、全身が震えました。ああ、そ…