📗 次回:第1章※これは、20年前のチベット自転車旅を振り返るシリーズの、最初の一編です。 久しぶりに実家に帰った。ふとした拍子に、押入れの奥から見つけたのは、20年ほど前に使っていたバフィンのブーツだった。ホコリをかぶり、すっかり忘れられたその姿は、まるで時間に置き去りにされた記憶のかたまりのようだった。 このブーツは、かつて冬のチベットを自転車で旅したときに履いていたものだ。防寒対策として選んだバフィンのブーツは、極寒の高地でも頼もしい存在だった。 標高3000メートル超、風が巻き上げる乾いた大地。どこまでも続く道の先に、旅はあった。 標高3000メートルを超える乾いた大地で、砂埃を巻き上…