二条の院へ帰って、源氏は又寝《またね》をしながら、 何事も空想したようにはいかないものであると思って、 ただ身分が並み並みの人でないために、 一度きりの関係で退《の》いてしまうような態度の取れない点を 煩悶《はんもん》するのだった。 そんな所へ頭中将《とうのちゅうじょう》が訪問してきた。 「たいへんな朝寝なんですね。なんだかわけがありそうだ」 と言われて源氏は起き上がった。 「気楽な独《ひと》り寝なものですから、 いい気になって寝坊をしてしまいましたよ。御所からですか?」 「そうです。まだ家《うち》へ帰っていないのですよ。 朱雀《すざく》院の行幸の日の楽の役と舞《まい》の役の人選が 今日あるの…