小学生のころの記憶である。 このころの小生の不幸は、実家の斜め前が書道家の家だったことである。 日展にも作品を出展するような人だったようだ。 毎週土曜日、姉と一緒にその書道教室に通わされていた。 姉はその後書道の道をつづけ、墨蹟というような日本美術の美学の世界をなりわいとしている。 一方、自分にとっては、貴重な土曜日の遊び時間の減少、時間と金の浪費に過ぎなかった。 玄関から丸い砂利石を敷かれた小道を奥へ進むと、京風の御宅があり、教室に入る。 和服を着て正座された奥さんに挨拶をし始まる。 墨をすり、お題となるものを書き、できたものを先生のところに持っていき、朱筆でなおしてもらう。 眉間にしわをよ…