面接に於ける常套句と言われれば、大抵がまず「潤滑油」を思い出す。 あまりに多用されすぎて、大喜利のネタと化しているのもまま見受けられるほどである。 人と人との間を取り持ち、彼らの心を蕩かして個々の障壁を取り払い、渾然一体と成すことで、組織としての能力をより効果的に発揮する――そうした能力は確かに貴重だ。どんな時代でも重宝されるに違いない。 明治に於いて、既にそのことに気が付いていた者が居る。 気が付いて、意識的かつ積極的に活用していた者が居る。 元老、井上馨その人である。 (井上の佩刀。元治元年、袖解橋の変の折、差していたもの) もっとも当時、「潤滑油」は未だ一般的な語句でなく、従ってまた井上…