夜の配役:有馬頼義 1959年(昭34)文芸春秋新社刊。 1960年(昭35)角川書店、角川小説新書。 1961年(昭36)東都書房刊、現代長編推理小説全集第4巻(有馬頼義集)所収。 戦後復興期に建てられた高級アパートで、住人の美女が謎の死をとげる。元情夫の男は気まぐれから女性を自殺に見せかける工作をする。警察も不審死から自殺の線に落ち着く。この同じ階に住む12人のほとんどが、様々な職業の男女ながら、銀座のバー「ダーク・ムーン」の常連という顔見知りだった。 物語では、殺人事件というよりもその不審死の背後に隠された真相を手さぐりするように探究する。推理小説にしては展開が緩慢なのだが、それは個々の…