高倉宮が法輪院で休まれている頃、 京の街は宮の謀叛《むほん》の噂でもちきっていた。 戦乱はもはや免れまい、 あわてて逃げ仕度にかかる者さえいた。 と共に一体何が宮を 謀叛に走らせたのかというせんさくが囁き交された。 黒幕とも目される源三位頼政の名が、 人々の口に上ったのもこの時である。 高倉宮謀叛の知らせは京都に大きな衝撃を与えた。 騒動はいつ終るとも知れなかった。 宮を打倒平家へ走らせた源三位入道頼政は、 どんな動機を持っていたのだろうか、 今迄都にあって誰と衝突するでもなく穏かに過して来た侍である。 何故、今年になって急に平家滅亡を心に誓ったのか。 つらつら案ずるに、これは入道頼政が、 勝…