宮の勢を破り頼政一味の大将たちを討ちとった平家は、 何んとかしてあの競の滝口を生け捕りたいものと 機会をうかがっていたが、 もとより心得ていた競は 存分の戦で敵を数多倒すや腹かき切って自害した。 また円満院大夫源覚は、 もう宮も遥か落ちたであろうと、 右手に大長刀、左手に大太刀を持って敵中を突破、 宇治川に出るや水にもぐると 物具一つ失うことなく対岸に着いた。 そして小高い所に走りのぼると大声で嘲弄した。 「どうじゃ平家の者ども、 ここまで来られたら来てみるがよい」 しばらくからからと笑うと、三井寺へ帰っていった。 この乱戦の中で、 平家勢の飛騨守景家《ひだのかみかげいえ》は さすが歴戦の強者…