姫君は無邪気に父君といっしょに車へ早く乗りたがった。 車の寄せられてある所へ明石は自身で姫君を抱いて出た。 片言の美しい声で、 袖をとらえて母に乗ることを勧めるのが悲しかった。 末遠き 二葉の松に 引き分かれ いつか木高き かげを見るべき とよくも言われないままで非常に明石は泣いた。 こんなことも想像していたことである、 心苦しいことをすることになったと 源氏は歎息《たんそく》した。 「生《お》ひ初《そ》めし根も深ければ 武隈《たけくま》の松に小松の千代を並べん 気を長くお待ちなさい」 と慰めるほかはないのである。 道理はよくわかっていて抑制しようとしても 明石の悲しさはどうしようもないのであ…