末遠き 二葉の松に 引き分かれ いつか木高き かげを見るべき by 明石の上 幼い姫君にお別れして いつになったら 立派に成長した姿を見ることができるのでしょう 【源氏物語578 第19帖 薄雲9】 姫君は無邪気に父君といっしょに車へ早く乗りたがった。 車の寄せられてある所へ明石は自身で姫君を抱いて出た。 片言の美しい声で、 袖をとらえて母に乗ることを勧めるのが悲しかった。 末遠き 二葉の松に 引き分かれ いつか木高き かげを見るべき とよくも言われないままで非常に明石は泣いた。 こんなことも想像していたことである、 心苦しいことをすることになったと 源氏は歎息《たんそく》した。 「生《お》ひ…