【🪷古文】 七月になりてぞ参りたまひける。 めづらしうあはれにて、 いとどしき御思ひのほど限りなし。 すこしふくらかになりたまひて、 うちなやみ、面痩せたまへる、 はた、げに似るものなくめでたし。 例の、明け暮れ、こなたにのみおはしまして、 御遊びもやうやうをかしき空なれば、 源氏の君も暇なく召しまつはしつつ、 御琴、笛など、さまざまに仕うまつらせたまふ。 いみじうつつみたまへど、 忍びがたき気色の漏り出づる折々、 宮も、さすがなる事どもを多く思し続けけり。 かの山寺の人は、 よろしくなりて出でたまひにけり。 京の御住処尋ねて、時々の御消息などあり。 同じさまにのみあるも道理なるうちに、 この…