袴着《はかまぎ》は たいそうな用意がされたのでもなかったが 世間並みなものではなかった。 その席上の飾りが雛《ひな》遊びの物のようで美しかった。 列席した高官たちなどはこんな日にだけ来るのでもなく、 毎日のように出入りするのであったから目だたなかった。 ただその式で姫君が 袴の紐《ひも》を互いちがいに 襷形《たすきがた》に胸へ掛けて結んだ姿が いっそうかわいく見えたことを言っておかねばならない。 大井の山荘では毎日子を恋しがって明石が泣いていた。 自身の愛が足らず、 考えが足りなかったようにも後悔していた。 尼君も泣いてばかりいたが、 姫君の大事がられている消息の伝わってくることは この人にも…