久しぶりに高校の教科書を開く機会があって、ぺらぺらとページをめくるうち、中島敦作の『山月記』が目に留まりました。優秀な官吏でありながらも詩人になることを志して隠居した李徴が、自分自身と周囲の人に対するプライドに苛まれた挙句、虎に姿を変えてしまう話。みなさんも覚えがあるかもしれません。 高校生の当時は、「李徴はひどく自意識の強い人だな」というのが正直な感想でした。「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」という印象的なワードが代表するように、自分自身に対するプライド、他の人の視線や評判に敏感な自我の主張が前面に見えていました。再読してみると、その印象はそのままですが、ほかにも詩作について、書くことについて…