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束論

(サイエンス)
そくろん

束論(lattice theory)は、束と呼ばれる順序構造から得られる代数的構造に関する数学である。ブール代数ハイティング代数を含む。

順序による定義

順序集合 (L,\leq) が束であるとは、任意の二元集合に上限下限が存在するものをいう。上限を結び、下限を交わりといい、それぞれ a\vee ba\wedge b と書く。

等式による定義

代数系 (L,\vee,\wedge) が束であるとは次を満たすことである:

  1. 交換律:\forall a,b\in L(a\vee b=b\vee a)
  2. 結合律:\forall a,b,c\in L(a\vee(b\vee c)=(a\vee b)\vee c)
  3. 吸収律:\forall a,b\in L(a\vee(a\wedge b)=a)
  4. 上の3つの論理式の \vee\wedge を交換してできる論理式

2つの定義の同値性

上の2つの定義は実は同値である。順序集合 (L,\leq) が前者の意味で束ならば、そこから得られる代数系 (L,\vee,\wedge) は後者の意味でも束である。さらに別の順序を a \preceq b\Leftrightarrow a\wedge b=a と定義すると、この順序は元の順序と一致する。代数系 (L,\vee,\wedge) が後者の意味で束ならば、順序を a\leq b\Leftrightarrow a\wedge b=a と定義して得られる順序集合は前者の意味でも束である。さらに別の演算を a\curlyvee b=\sup\{a,b\}a\curlywedge b=\inf\{a,b\} と定義すると、この演算は元の演算と一致する。

すなわち束のクラスは等式クラスであり、束の直積代数が再び束となることがわかる。2つの束 (L,\leq),(L',\leq') の直積代数 (L\times L',\vee,\wedge) を考える。a\preceq b\Leftrightarrow a\wedge b=a と定義したとき、\preceq は直積集合 L\times L' 上で (a,b)\preceq(c,d)\Leftrightarrow a\leq c\text{ and }b\leq' d なる順序を成す。

代表例

  • 集合 A の冪集合を包含関係で並べた順序集合 (2^A,\subset)。結びは和集合、交わりは積集合である。
  • 位相空間 X の開集合族を包含関係で並べた順序集合 (\mathfrak{O},\subset)。最初の例は離散位相を入れた場合に相当する。特に開かつ閉集合の全体が成す束はブール代数になる。
  • 述語論理の文に適当な順序を入れて得られる商代数(➜リンデンバウム代数)。
  • 正整数を整除関係"m|n\Leftrightarrow mn を割り切る"という関係で並べた順序集合 (\mathbb{Z}^+,|)。結びは最小公倍数、交わりは最大公約数である。
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