インドネシアから来たお客様だった。 自分がその国に行ったのはもう三十五年は前だった。そこに当時新しく取引を始めた会社があり、自社製品の教育に行ったのだった。それは技術者がトレーナーであり営業の自分は通訳担当。初めての海外だった。南シナ海の上を香港発のガルーダ・インドネシアが飛んでいく。機内からみた海は静かだったが夕暮れが近く時折雷が光っていた。シルクの生地のように重く輝く海を見ながら何故だろう自分は涙が出た。かつてここで日本と米国や英国・豪国の飛行機が空中戦をして多くの命が散って行った。飛行機と戦記物が好きだった自分にとって太平洋とはそんな感傷を感じさせた。 出張前に取引先から予め連絡があった…