『日本民俗学大系第1巻』(平凡社、昭和35年4月)の小川徹「民俗学と地理学、とくに人文地理学との関係」は、「三 民俗学史上における人文地理学的方法」の付記として、小寺廉吉*1、林宏、山口弥一郎、千葉徳爾らの民俗学的活動に触れなかったことに言及している。これら地理学者のうち、山口弥一郎については、最近内山大介・辻本侑生『山口弥一郎のみた東北:津波研究から危機のフィールド学へ』(文化書房博文社、令和4年2月)が刊行されたところである。そこで、今回は林宏の話題にしよう。 小川は前記論考で、「林宏氏も地理学者出身で近畿・北陸の民俗にくわしいし、南方その他海外の民族学的研究にも関心が深い人である」として…