時ならで 今朝咲く花は 夏の雨に 萎《しを》れにけらし 匂《にほ》ふほどなく 頭中将の乾杯の辞に対し、 源氏は微笑みながら杯を取った🥂 〜時節に合わず今朝咲いた花は夏の雨に しおれてしまったようです。 美しさを見せる間もなく 【第10帖 賢木 さかき】 それもがと 今朝《けさ》開けたる初花に 劣らぬ君が にほひをぞ見る と乾杯の辞を述べた。 源氏は微笑をしながら杯を取った。 「時ならで 今朝咲く花は 夏の雨に 萎《しを》れにけらし 匂《にほ》ふほどなく すっかり衰えてしまったのに」 あとはもう酔ってしまったふうをして 源氏が飲もうとしない酒を 中将は許すまいとしてしいていた。 席上でできた詩歌…