谷崎潤一郎「春琴抄」の語り手の描かれ方――『殉情』を中心に 1 はじめに 宝塚歌劇専用チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」でこの4月、谷崎潤一郎「春琴抄」が原作の『殉情』が放映される。それを記念して、放映される2022年10月13日から11月7日まで上演された花組の『殉情』(主演:13日から21日までは帆純まひろ、30日から7日までは一之瀬航季)での新しくなった語り手の描き方について考えていきたい。 なぜ、語り手に注目するのか。ヒントは原作にある。谷崎は、「春琴抄を書く時、いかなる形式をとつたらばほんたうらしい感じを与へることが出来るのか一事が、何よりも頭の中にあつた。」と言う(「春琴抄…