水鶏だに 驚かさずば いかにして 荒れたる宿に 月を入れまし 水鶏が近くで鳴くのを聞いて 懐かしい調子でいう花散里の君(源氏の君に by 花散里) 〜せめて水鶏だけでも 戸を叩いて知らせてくれなかったら どのようにしてこの荒れた宿に 月の光を迎え入れることができたでしょうか 【第14帖 澪標 みおつくし】 水鶏《くいな》が近くで鳴くのを聞いて、 水鶏だに 驚かさずば いかにして 荒れたる宿に 月を入れまし なつかしい調子で言うともなくこう言う女が 感じよく源氏に思われた。 どの人にも自身を惹《ひ》く力のあるのを知って 源氏は苦しかった。 「おしなべて たたく水鶏に 驚かば うはの空なる 月もこ…