【平家物語 第2巻 小松教訓③】 清盛邸の一間に押こめられたままの新大納言成親は、 次第に冷静になるにつれて、 陰謀露顕の理由をあれこれと考えていた。 「それにしても、用意周到にとは思い続けておったが、 どこかに疎漏な点があったのであろう? 北面の武士の内の誰かなども、 今にして思えば、少しうかつであったか?」 いろいろに思い廻らしている時、 後の方から、荒々しい足音がして、障子を手荒く引あけたのは、 満身怒りにおののいている清盛その人である。 「そもそも、其許《そこもと》は、平治の乱で、 殺されるばかりのところを、重盛が命乞いして助かったお人、 それを、どんな恨があってのことか、 当家滅亡の…