「アジアは一つ」という岡倉天心の言葉が切取られて誤解され、独り歩きしてしまった噺は有名だ。 東南アジア各国の小説に興味を抱いた時期があった。量においてはインドネシア作家の作品が圧倒的に多かったが、タイ・ミャンマー・ラオス・マレーシア・フィリピンの作品もある。入手してすぐさま読んだ作品もあり、ぜひ読もうと入手したままツンドクに了った作品もある。 宗教観の相違による習俗や美意識のあれこれはあるけれども、似かよった面も多い。乱暴に申せば、近代化の悩みだ。タイを除けば、西洋宗主国にょる植民地下に育まれた習慣と、独自民族性との相克がある。宗主国の手先となって甘い汁を吸った者と、弾圧され冷飯を喰わされた者…