当ブログの「古書肆に出す」シリーズをお眼になさってくださったかたから、だいぶ片づいてきたでしょうと、お声掛けいただくことがある。おかげさまでと、いちおう応えてはいる。が、あくまでも挨拶であって、実情はどこが進展したのかという状況だ。 空間を圧縮して、身辺の店仕舞を加速させるためには、より核心部分に手を着けねばならない。 昭和十年代刊行の、古い小説たちだ。紙質も印刷も弱いので、ほとんどにグラシンを掛けてある。写真映りが悪く、背文字も表紙も判然としない。が、ここは保護優先だ。 すべて鶴田知也の著作である。昭和十一年に『コシャマイン記』で第三回芥川賞を受賞した。第二回が受賞作ナシだったから、第一回の…