『柳宗悦全集』全22巻25冊(筑摩書房)のうち第1~第20巻 すべり出しは快調に配本されていった。既刊著作を柱に、分野を同じくする未収録文章を併せてゆく編集作業だろうから、目処も立てやすかったことだろう。 挟み込み「月報」の末尾には、柳宗悦の書簡・資料をお持ちのかたは編集部までご一報くださいと囲みで告知された。断簡零墨主義の高い志を謳った編集部としては、遺漏なきを期する思いだったにちがいない。 配本はしだいに間遠になっていった。ひとつには、柳宗悦という人は理想家肌の美学者であり運動実践家であって、文士ではなかったという点がある。求められればどこにでも何度でも、同工異曲の内容を書いて憚らなかった…