朝鮮小壺。小型とあなどって手に取ると、存外重い。分厚い。垢抜けない。糸底は粗削りだし、貫入には粗密が著しく、正面も裏も視定めがたい。つまり観賞を意図していない丈夫専一で、実用一点張りの品だ。土間に落したくらいでは割れそうもない。 台所の隅で、塩か油でも収めたものか。まさか香炉の代用か線香立てでもあるまい。製作時代の用途目的については、聴き漏らした。 湯島の喫茶店を兼ねた骨董屋で入手した。通りすがりにいく度か覗いて、面白い店だと口にしたら、母が異様な関心を示したので、一度だけ案内したことがあった。うず高い古道具に埋れたテーブルで珈琲を飲むのを、母も面白がった。親孝行なんぞしたこともなかったし、さ…