終日風の揉《も》み抜いた家にいたのであるから、 源氏も疲労して思わず眠った。 ひどい場所であったから、横になったのではなく、 ただ物によりかかって見る夢に、 お亡くなりになった院がはいっておいでになったかと思うと、 すぐそこへお立ちになって、 「どうしてこんなひどい所にいるか」 こうお言いになりながら、 源氏の手を取って引き立てようとあそばされる。 「住吉の神が導いてくださるのについて、 早くこの浦を去ってしまうがよい」 と仰せられる。 源氏はうれしくて、 「陛下とお別れいたしましてからは、 いろいろと悲しいことばかりがございますから 私はもうこの海岸で死のうかと思います」 「とんでもない。 …