顧みられないというようなことはなくても、 源氏が重んじる妻は他の人で、自分は少女時代から養ってきた、 どんな薄遇をしても 甘んじているはずの妻にすぎないことになるのであろうと、 こんなことを思って夫人は煩悶《はんもん》しているが、 たいしたことでないことは あまり感情を害しない程度の夫人の恨み言にもなって、 それで源氏の恋愛行為が 牽制《けんせい》されることにもなるのであったが、 今度は夫人の心の底から恨めしく思うことであったから、 何ともその問題に触れようとしない。 外をながめて物思いを絶えずするのが源氏であって、 御所の宿直《とのい》の夜が多くなり、 役のようにして自宅ですることは手紙を書…