竜頭鷁首《りゅうとうげきしゅ》の船はすっかり唐風に装われてあって、 梶取《かじと》り、棹取《さおと》りの童侍《わらわざむらい》は 髪を耳の上でみずらに結わせて、 これも支那《しな》風の小童に仕立ててあった。 大きい池の中心へ船が出て行った時に、女房たちは外国の旅をしている気がして、 こんな経験のかつてない人たちであるから非常におもしろく思った。 中島の入り江になった所へ船を差し寄せて眺望をするのであったが、 ちょっとした岩の形なども皆絵の中の物のようであった。 あちらにもそちらにも霞《かすみ》と同化したような花の木の梢《こずえ》が 錦《にしき》を引き渡していて、 御殿のほうははるばると見渡され…