源氏は見かねて言った。 「あなたの着物のことなどをお世話する者がありますか。 こんなふうに気楽に暮らしていてよい人というものは、 外見はどうでも、何枚でも着物を着重ねているのがいいのですよ。 表面だけの体裁よさを作っているのはつまりませんよ」 女王はさすがにおかしそうに笑った。 「醍醐《だいご》の阿闍梨《あじゃり》さんの世話に手がかかりましてね 、仕立て物が間に合いませんでした上に、 毛皮なども借りられてしまいまして寒いのですよ」 と説明する阿闍梨というのは鼻の非常に赤い兄の僧のことである。 あまりに見栄を知らない女であると思いながらも、 ここではまじめな一面だけを見せている源氏はなおも注意を…