【平家物語98 第4巻 大衆そろえ①】 三井寺は防備のため山を切り開いて、 大小の関所を作った。 こうした中で衆徒一同が集って評定が真剣に行なわれた。 「比叡は変心、頼みの奈良興福寺の援軍はまだ来ていない。 このまま徒らに時を延ばすのは平家を利するだけだ。 直ちに六波羅へ今夜押しかけ夜討をかけよう。 ついては、老人と若い者を二手にわける。 老僧たちを如意ヶ峰より敵の搦手《からめて》に向わせる。 足軽どもを先手としてまず白川の民家に火を放てば、 六波羅の武士たちは、 敵襲と思うてここに駆けつけるにちがいない。 この間岩坂、桜本のあたりで防戦、 しばらく時をかせぐと共に敵をここへ引きつけておく。 …