夕顔(ゆうがお) 「巻名」 巻の名は、次のような御歌のやりとりにちなんでおります。 心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花(夕顔) 寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔(光源氏) これらは、光源氏と夕顔とがやりとりなさった御歌でございます。 本文 六条わたりの御忍び歩きのころ、うちよりまかで給ふ中宿りに、大弐の乳母のいたくわずらひて、尼になりにける、とぶらはむとて、五条なる家たづねておはしたり。御車いるべき門はさしたりければ、人して惟光召させて、待たせ給ひける程、むつかしげなるおほぢのさまを見わたし給へるに、この家のかたはらに、 檜垣といふ物あたらしうして、上は半蔀…