>『日本の音』小泉文夫 平凡社ギターのはるかな源泉は琵琶のようなので、琵琶のことを調べているうちに、古典文学の中で「物の音」や「物の怪」という興味深い言葉にぶつかった。ひとつは、徒然草の十六段だ。 「神樂こそ、なまめかしく、面白けれ。大かた、物の音には、笛・篳篥、常に聞きたきは、琵琶・和琴。」 とある。物の音とは何かという説明はもちろんない。もう一つは、源氏物語の第三十五帖 若菜下にある。 「この琴は、まことに跡のままに尋ねとりたる昔の人は、天地をなびかし、鬼神の心をやはらげ、よろづの物の音のうちに従ひて、悲しび深き者も喜びに変はり、賤しく貧しき者も高き世に改まり、宝にあづかり、世にゆるさるる…