はかりなき 千尋の底の海松房《みるぶさ》の 生《お》ひ行く末は われのみぞ見ん 紫の姫君の髪そぎの折の源氏の君の歌🪻 〜限りなく深い千尋の海の底に生える海松のように 豊かに成長してゆく黒髪は わたしだけが見るとしましょう。 【第9帖 葵 あおい】 きれいに装った童女たちを点見したが、 少女らしくかわいくそろえて切られた髪の裾が 紋織の派手な袴《はかま》にかかっているあたりが ことに目を惹いた。 「女王さんの髪は私が切ってあげよう」 と言った源氏も、 「あまりたくさんで困るね。 大人になったら しまいにはどんなになろうと髪は思っているのだろう。」 と困っていた。 「長い髪の人といっても前の髪は少…