「夕露に紐とく花は玉鉾の たよりに見えし縁にこそありけれ 露の光やいかに」 とのたまへば、後目に見おこせて、 「光ありと見し夕顔のうは露は たそかれ時のそら目なりけり」 とほのかに言ふ。 をかしと思しなす。 げに、うちとけたまへるさま、 世になく、所から、 まいてゆゆしきまで見えたまふ。 「尽きせず隔てたまへるつらさに、 あらはさじと思ひつるものを。 今だに名のりしたまへ。 いとむくつけし」 とのたまへど、 「海人の子なれば」とて、 さすがにうちとけぬさま、 いとあいだれたり。 「よし、これも我からなめり」と、 怨みかつは語らひ、 暮らしたまふ。 惟光、尋ねきこえて、 御くだものなど参らす。 …