訓読 >>> もののふの八十氏河(やそうじかは)の網代木(あじろき)に いさよふ波の行く方知らずも 要旨 >>> 宇治川の網代木に遮られてただよう水のように、人の行く末とは分からないものだ。 鑑賞 >>> 柿本人麻呂が近江国から大和へ上った時、宇治川の辺(ほとり)で詠んだ歌です。ここは、近江国と大和の往復には必ず通る所だったとされます。「物の部の八十」は「うぢ」を導く序詞。「もののふの八十氏」の「もののふ(物の部)」は朝廷に仕える官人、「八十氏」は多数の氏のことで、その「氏」を川の名の「宇治」に転じています。「網代木」は網代をつくるための棒杭。網代は川魚を獲るしかけ。「いさよふ」は漂う、たゆた…