随分昔のことだが、イベント会場からたくさんの人が吐き出された時だったか。駅改札に上っていく階段が人でぎゅうぎゅうになり、みな歩みを止めざるをえなくなった。改札口が見えない位置だったので何が起こっているのか今後どうなるのかもわからず、群衆の心が少しだけいらついて来たその時。 一人の若者が言った。結構な範囲に聞こえる声で言った。 「止まった!・・・王蟲が止まったぞ!」 クスックスクスッ っと笑いが起こり、その場にいた王蟲たち(?)の心の中の攻撃色が消えていくのがわかった。 出勤タイムではなく、気持ちが急くような時間帯ではなかったことも大きかったと思うが、その場にいた人びとの気持ちは緩んだと思う。 …