コーヒーが自分にとり日常的になったのは何時からなのだろう。小学生の頃、北杜夫と遠藤周作という自分の読書癖に大きな影響を与えた二人が森の中で珈琲を飲むテレビコマーシャルがあった。どくとるマンボウと狐狸庵先生が飲む珈琲はインスタントではあったが如何にもおいしそうだった。 大学生になった頃、初めてチェーン店のコーヒーを飲んだ。そこはコーヒーがメインで食べ物と言えばホットドックがあった程度だろう。当時流行っていたワンレングスの女の子が向かいに座っている。左側に垂れた長い髪を手で上に被せる、そんな仕草が物憂げで、遠い目で窓を見るのだから困ってしまう。自分は彼女に、喜ぶような、わくわくするような話題を提供…