-アーア、困ったわ。 また美里はため息をついてスマホの画面を見つめた。 ここ数日、美波は同じことを繰り返していた。 もし悠介さんと付き合うようになったら、いつかあの父親に対する憎しみを悠介に対しても抱くようになってしまうのではないか? 美里は父親が家を出ていった日のことを思い出していた。中学2年になったばかりの春の夜だった。桜は咲いていたが、花冷えのする一日で、出ていく彼は美里に声を掛けることも無く黙って出て行った。もう相手の女のことしか頭になかったのだろう。 美里が高校に入学してから、母はぽつりぽつりと独り言のように美里に話すようになった。お父さんに女ができたのはいつからだとか、帰宅が遅くな…