当日は終日夫人と語り合っていて、 そのころの例のとおりに 早暁に源氏は出かけて行くのであった。 狩衣《かりぎぬ》などを着て、簡単な旅装をしていた。 「月が出てきたようだ。 もう少し端のほうへ出て来て、 見送ってだけでもください。 あなたに話すことがたくさん積もったと 毎日毎日思わなければならないでしょうよ。 一日二日ほかにいても話がたまり過ぎる苦しい私なのだ」 と言って、 御簾《みす》を巻き上げて、 縁側に近く女王を誘うと、 泣き沈んでいた夫人はためらいながら膝行《いざ》って出た。 月の光のさすところに非常に美しく女王はすわっていた。 自分が旅中に死んでしまえばこの人は どんなふうになるであろ…