訓読 >>> 志賀(しか)の海女(あま)は藻(め)刈り塩焼き暇(いとま)なみ櫛笥(くしげ)の小櫛(をぐし)取りも見なくに 要旨 >>> 志賀島の海女たちは、藻を刈ったり塩を焼いたりして暇がないので、櫛笥の小櫛を手に取って見ることもできずにいる。 鑑賞 >>> 「志賀」は、博多湾の志賀島。現在は陸続きになっています。「藻」は、海藻の総称。「櫛笥」は、櫛を入れる箱。「小櫛」の「小」は、接頭語。海人の女がその生業にあまりにも忙しく、女として大切な髪をいたわる暇もないことを嘆き憐れんでいます。『万葉集』で「海人」を詠んだ歌は66首あり、地名を冠して呼ばれることが多く、その大半は海人自身によるのではなく…