これは趣味の廃墟探索をやめた男の体験談だ。 大学時代の友人A,Bと3人で、東北地方のとある山にある廃集落を探索した時のこと。潰れかけた廃屋が点在するなか、一戸だけ表札が付いままの家があった。 3人は好奇心の赴くまま、"吉田さん"の家に入って玄関の戸を閉めた。家の中は荒れていてカビ臭かったが、それまで覗いた他の家に比べれば家具も残っていて、頑張れば住めそうな気さえする。吉田さんがきっと最後までこの集落に住んでいたのかなぁ、なんて話していると 「回覧板持ってきましたあ」 突然玄関の方から声が聞こえた。現在の時刻は23:30。しかも山奥の廃集落だ。ありえない。 玄関も引き戸の向こうももちろん暗闇で、…