国家とマグロの生態は微妙なところで通い合う。どちらも前進を止(よ)せば死ぬ。 「足るを知るの教は一個人の私に適すべき場合もあらんかなれども、国としては千萬年も満足の日あるべからず、多慾多情ますます足るを知らずして一心不乱に前進するこそ立国の本色なれ」。――福澤諭吉の『百話』に於いて、私は特にこの一条が好きである。 およそ国家の発展に、「もうここらでよか」のセリフは大禁物だ。目指す地平を見失い、ただただ惰性の現状維持に腐心しだしてしまったら、その瞬間からはや既に、斜陽衰退の中に居る。そう心得て構うまい。 (『賭博破戒録カイジ』より) かつての日本は目的意識が鮮明だった。明治に於いては「富国強兵」…