「私は過去の青年時代に、 みずから求めて物思いの多い日を送りました。 恋愛するのは苦しいものなのですよ。 悪い結果を見ることもたくさんありましたが、 とうとう終《しま》いまで 自分の誠意がわかってもらえなかった二つのことがあるのですが、 その一つはあなたのお母様のことです。 お恨ませしたままお別れしてしまって、 このことで未来までの煩いになることを 私はしてしまったかと悲しんでいましたが、 こうしてあなたにお尽くしすることのできることで 私はみずから慰んでいるものの なおそれでもおかくれになったあなたのお母様のことを考えますと、 私の心はいつも暗くなります」 もう一つのほうの話はしなかった。 …