「尚侍《ないしのかみ》は 貴婦人の資格を十分に備えておいでになる、 軽佻《けいちょう》な気などは 少しもお見えにならないような方だのに、 あんなことのあったのが、私は不思議でならない」 「そうですよ。艶《えん》な美しい女の例には、 今でもむろん引かねばならない人ですよ。 そんなことを思うと自分のしたことで 人をそこなった後悔が起こってきてならない。 まして多情な生活をしては年が行ったあとで どんなに後悔することが多いだろう。 人ほど軽率なことはしないでいる男だと思っていた 私でさえこうだから」 源氏は尚侍の話をする時にも涙を少しこぼした。 「あなたが眼中にも置かないように軽蔑している山荘の女は…