年暮れて 岩井の水も 氷とぢ 見し 人影の あせも行くかな 藤壺の中宮と源氏の君が院のご在世中の話をしておいでになった。 悲しみの中の王の命婦の歌🪷 〜年が暮れて 岩井の水も凍りついて 見慣れていた人影も 見えなくなってゆきますこと。 【第10帖 賢木 さかき】 中宮は三条の宮へお帰りになるのである。 お迎えに兄君の兵部卿の宮がおいでになった。 はげしい風の中に雪も混じって散る日である。 すでに古御所《ふるごしょ》になろうとする 人少なさが感ぜられて静かな時に、 源氏の大将が中宮の御殿へ来て 院の御在世中の話を宮としていた。 前の庭の五葉が雪にしおれて下葉の枯れたのを見て、 蔭《かげ》ひろみ …