新古今和歌集 巻第十三 恋歌三 1167 題知らず 実方朝臣 明けがたき二見の 浦に寄る波の 袖のみ濡れて 沖つ島人 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者・峯村文人・小学館)の訳 題知らず 実方朝臣 夜の明けがたい二見の浦に寄る波のように、長い感じの夜を、格子(こうし)の開けがたいあなたの家でこぼした涙で、袖ばかりが濡れて、起きていた、沖の島人のような私です。 意訳 以下に意訳を記します。 題題は掲げぬことといたします。 作者藤原実方 あの方が住まう二見が浦へと、逢瀬を願う心ひとつに赴きましたが―― その御簾の奥、格子の向こうにお姿を求めることは叶わず、扉は閉ざされたままでございました。…